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AGA治療

かつらという選択肢と、避けるべき転用|診療ガイドラインの残りの項目

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日本皮膚科学会の診療ガイドラインには、当サイトがまだ扱っていなかった項目が2つ残っていました。かつらと、まつ毛の薬の転用です。

方向はまったく逆です。片方は推奨度C1(行ってもよい)、もう片方はC2(行わないほうがよい)。順に見ます。

かつらは推奨度C1

推奨度:C1 推奨文:かつら着用を行ってもよい.

C1は「行ってもよい」です。カルプロニウム塩化物外用やt-フラバノン外用と同じ位置になります。

「治療ではないから対象外」ではなく、ガイドラインが評価の対象に入れているという点が、まず知っておく価値のある事実です。

根拠は QOL の研究

ガイドラインが引いているのは2件の症例集積研究です。男性を対象としたものを紹介します。

26名の男性被験者に、かつら使用前後でアンケート調査を実施したものです。使われた指標は PIADS(The Psychological Impact of Assistive Device Scale)VAS(visual analog scale)で、患者の生活の質(QOL)や満足度を客観的に示すものとされています。

使用前を0としたときの使用後のスコアは次のとおりです。

  • total score 30.77
  • competence 1.25
  • adaptability 1.167
  • self-esteem 1.125

いずれも有意に向上していました(P<0.001)。PIADSの各スコアはVASによる満足度の変化と正の相関を示し、さらにNorwood Hamilton分類による重症度とも正の相関を示しています。

つまり進行している人ほど、かつらによるQOLの改善幅が大きかったという結果です。

そして重要な一文があります。

かつらの着用による副作用は特に報告されなかった

この項目が意味していること

AGA治療の記事は、たいてい「どう毛を増やすか」の話になります。しかしガイドラインは、毛を増やさずに困りごとを解決する方法も選択肢として評価しています。

当サイトが繰り返し書いてきたとおり、AGA治療には制約があります。

  • 中止すると効果は消失する(続けることが前提)
  • 効果の判定に6か月程度かかる
  • 副作用として性機能に関するものや肝機能値の異常が報告されている
  • 自由診療で全額自己負担

これらを引き受けたくない人にとって、副作用の報告がなく、効果が着けたその日に出る選択肢があるという事実は、判断材料になります。

もちろん併用もできます。治療を続けながら、その間の見た目をかつらで補うという組み方です。排他的な選択ではありません。

治療の位置づけはAGA治療薬の種類、やめたときの話は治療をやめたらどうなるかへ。

もうひとつの項目:まつ毛の薬の転用

こちらは逆向きです。

推奨度:C2 推奨文:ビマトプロストおよびラタノプロストの外用を行わない方がよい.

もともと緑内障の眼圧降下目的で使われてきた薬で、まつ毛を伸ばす作用があることから睫毛貧毛薬としても開発された経緯があります。日本ではビマトプロストが市販されています。

これを頭皮に転用できないかという発想が出てくるわけですが、ガイドラインの評価はC2です。

なぜC2なのか

男性型脱毛症に対するラタノプロスト外用については、ランダム化比較試験が1件実施されています。

0.1%ラタノプロストを用いた、16名(平均年齢23〜35歳、Hamilton分類II〜III)の男性被験者を対象とした24週間の試験です。プラセボ対照との左右比較による評価で、治療群は50%が改善、44%が変化なし、6%が悪化でした。画像解析では治療群の毛密度が上昇しています。

つまりまったく効かないわけではないのですが、ガイドラインは次の理由を挙げてC2としています。

  • 本邦ではラタノプロストは毛包を作用対象とした外用剤として承認されていない
  • 広範囲に外用する場合の安全性が確認されていない
  • 高価である

「効果が否定された」ではなく、承認の範囲外であり、頭皮という広い面積に使う安全性が未確認という理由づけです。この構造はAGAの注入治療(推奨度C2)と似ています。

転用と個人輸入の注意

まつ毛用の製品を頭皮に使うことは、承認された用法とは異なる使い方になります。

さらに、これらを個人輸入で入手する場合は別のリスクが加わります。厚生労働省は、個人輸入される外国製品には品質・有効性・安全性の保証がないこと、偽造品の可能性、そして健康被害が生じても医薬品副作用被害救済制度の対象外であることを挙げています → 個人輸入のリスク医薬品副作用被害救済制度

推奨度で並べ直す

これで、ガイドラインが挙げている項目がひととおり揃いました。

推奨度 項目
A ミノキシジル外用、フィナステリド内服、デュタステリド内服
B 自毛植毛術、LED・低出力レーザー照射、アデノシン外用
C1 カルプロニウム塩化物外用、t-フラバノン外用、サイトプリン・ペンタデカン外用、ケトコナゾール外用、かつら着用
C2 ビマトプロスト・ラタノプロスト外用、成長因子導入・細胞移植療法
D ミノキシジル内服

各項目の詳細は次にまとめています。

プラン名ではなく、この表のどこに位置するかで判断してください。 カウンセリングでは一般名で確認するのが基本です。

表のいちばん下について(未承認医薬品等の情報)

上の推奨度の表で推奨度Dとしたミノキシジルの内服薬について、医療広告等ガイドラインが求める4点を明記します。

  • 未承認である旨…ミノキシジルの内服薬は、日本国内で承認されていない医薬品です
  • 入手経路…医師の判断による個人輸入、または輸入代理店を経由して入手されます
  • 国内で承認された同一成分の医薬品の有無…国内で発毛効果について承認されているミノキシジル製剤は外用薬のみで、内服薬は承認されていません
  • 諸外国における安全性等…諸外国においても、発毛目的の内服薬としてミノキシジルを承認している国はありません。診療ガイドラインは、内服用製剤の添付文書の市販後調査欄に胸痛・心拍数増加・動悸・息切れ・呼吸困難・うっ血性心不全・むくみ・体重増加といった重大な心血管系障害が生じるとの記載があるとしています

あわせて、国内未承認の医薬品で健康被害が生じた場合は、医薬品副作用被害救済制度の対象外です。

治療のリスクと副作用

AGA治療は自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。

主なリスク

  • ビマトプロスト・ラタノプロストの外用は、診療ガイドラインで推奨度C2(行わないほうがよい)とされています
  • ラタノプロストは本邦で毛包を作用対象とした外用剤として承認されておらず、広範囲に外用する場合の安全性も確認されていません
  • 治療は進行を抑えることが目的で、中止すると効果は消失します
  • 効果の判定には6か月程度の継続が必要とされています
  • フィナステリドの服用によりPSA値が低下し、検査結果の解釈に影響します
  • 国内未承認薬・個人輸入した医薬品による健康被害は、医薬品副作用被害救済制度の対象外です

主な副作用

  • 性機能に関するもの(性欲減退、勃起機能の低下、射精障害)
  • 肝機能値の異常
  • ミノキシジルの外用薬による瘙痒・紅斑・落屑・毛包炎・接触皮膚炎・顔面の多毛
  • 外用の初期にみられる休止期脱毛(初期脱毛)

なお、かつら着用による副作用はガイドラインの引用する研究では特に報告されていません。

症状の程度や頻度には個人差があります。治療の可否は必ず医師の診察を受けたうえで判断してください。

まとめ

  • 診療ガイドラインはかつら着用を推奨度C1(行ってもよい)としている
  • 26名の男性を対象とした研究で、QOL指標が有意に向上。重症度と正の相関も示された
  • かつら着用による副作用は特に報告されていない
  • 治療と排他的ではなく、続けながら見た目を補うという組み方もできる
  • まつ毛の薬(ビマトプロスト・ラタノプロスト)の頭皮への転用は推奨度C2
  • 理由は「効かない」ではなく、承認の範囲外・広範囲外用の安全性未確認・高価であること

出典

  1. 日本皮膚科学会「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」2026-09-05確認)
  2. 厚生労働省「医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」2026-09-05確認)

この記事の作られ方

この記事は医師の監修を受けていません。医療行為の推奨ではなく、厚生労働省・消費者庁・国民生活センター・学会の診療ガイドライン、 および各クリニックが公表している情報を整理したものです。

記載の根拠は記事末の出典に、確認日とあわせて示しています。 効果・副作用・適応の判断は個人差が大きく、記事の情報で代替できるものではありません。 治療の可否は必ず医師の診察を受けたうえで判断してください。

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