クリックする前の広告のほうが、規制は厳しい|バナー・リスティング広告と限定解除
脱毛の広告は、たいていバナーか検索結果の広告枠から始まります。そこに出ている金額を見て、クリックして、公式サイトの料金表にたどり着く——という順路です。
ところが医療広告のルール上、この2つは別々の規制を受けます。しかも直感とは逆で、先に見るバナーのほうが厳しいのです。
なぜ厳しいほうが先に来るのか
医療機関が広告できる事項は、法律で限定されています。ウェブサイトなどで詳しい情報を出せるのは、広告可能事項の限定解除という仕組みがあるからです。その1番目の要件がこれです。
① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
「自ら求めて入手する」がポイントです。クリニック名で検索して公式サイトを開く行為は、これに当たります。
一方、ガイドライン本体はこう書いています。
インターネット上のバナー広告、あるいは検索サイト上で、例えば「癌治療」を検索文字として検索した際に、スポンサーとして表示されるものや検索サイトの運営会社に対して費用を支払うことによって意図的に検索結果として上位に表示される状態にしたものなどは、①を満たさないものであること。
向こうから出てきたものは、自ら求めて入手した情報ではない。 だから限定解除されず、広告可能事項の範囲しか書けません。
| 限定解除① | 書ける範囲 | |
|---|---|---|
| クリニックの公式サイト | 満たす | 要件②③④を満たせば、治療内容・費用・期間回数・リスクまで |
| バナー広告 | 満たさない | 広告可能事項のみ |
| リスティング広告 | 満たさない | 広告可能事項のみ |
なお、バナー広告そのものが禁止されているわけではありません。資料も広告可能事項の範囲内であれば広告可能と明記しています。
資料の例が、そのまま脱毛だった
事例解説書のバナー広告の項に載っている違反例は、脱毛のものです。ニュースサイトの右側に、こういうバナーが出ています。
○○クリニックの脱毛治療
1部位 2,000円 ▼ 1,000円
新規入会キャンペーン
治療実績県内1位
解説は2点を指摘しています。
- 比較優良広告に該当する(「治療実績県内1位」)
- 費用の強調に該当する(値下げの表示)
そして資料の図では、このバナーから飛んだ先のクリニックのサイトには、治療内容・費用・期間回数・リスク副作用がきちんと並んでいます。遷移先は適法で、バナーだけが違反という構図で描かれています。
「通常価格→割引価格」という書き方について
上の2点目は、脱毛の広告で最もよく見る形です。資料は別項でも取り上げています。
そこに載っている違反例も脱毛でした。
期間限定!夏のキャンペーン
〇脱毛治療 通常価格20,000円/1ヶ月→割引価格15,000円
ガイドラインの考え方は、医療広告は客観的で正確な情報の伝達に努めなければならないから、医療機関や医療の内容について品位を損ねる、あるいはそのおそれがある広告は行うべきではない、というものです。
資料が示す改善例は、拍子抜けするほど素っ気ないものです。
料金改定のお知らせ 7月1日から8月31日の間、「脱毛治療」は料金を変更致します。 〇脱毛治療 価格15,000円/1ヶ月
同じ15,000円でも、元の値段を横に置いて見せない。 これが求められている形です。
つまり、取り消し線と矢印で「いくら安くなったか」を見せる表示は、医療広告では控えるべきとされているということです。急がせる仕組みについてはモニター契約と「今だけ」にまとめました。
症例写真をバナーに使うことについて
第6版では、もう1つ注意事例が加わっています。
- サイト内のバナー画像に施術前後の写真が使われ、説明が付いていない
- そこから飛ぶ公式SNSアカウントにも同じ写真が投稿され、やはり説明がない
写真に必要な4点の付け方は症例写真の読み方へ。バナーは限定解除されないので、そもそも説明を付けても掲載できる場所ではありません。
読み手としてどうするか
規制の構造がわかると、実務は単純になります。
- 広告に出ている金額と条件は、そのままでは判断材料にならない。 書ける範囲が狭いので、前提条件が省かれている可能性が高い
- 必ず公式サイトの料金ページで確認し直す。 そこには限定解除の要件として、治療内容・標準的な費用・治療期間及び回数・リスクが書かれているはず
- 書かれていなければ、そのクリニックは要件を満たしていない
- 総額に戻してから比較する → ヒゲ脱毛の料金/分割払いと医療ローン
広告は入口であって、判断材料ではありません。 判断は公式サイトの料金ページとカウンセリングで行うものです → カウンセリングで確認すること
検索結果の上位表示について
もう1つ、実務的に効いてくる点があります。
ガイドラインが①を満たさないものとして挙げているのは、スポンサー枠だけではありません。検索サイトの運営会社に費用を支払って、意図的に上位に表示される状態にしたものも含まれます。
検索結果の上のほうにあることは、内容の妥当性とは関係がありません。順位が付いた比較サイトの読み方は脱毛の比較サイトとランキングの読み方へ。
施術のリスクと副作用
ヒゲ脱毛を含む医療脱毛は自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。
主なリスク
- 広告に表示される金額は前提条件が省かれていることがあり、総額と一致するとは限りません
- 一度破壊された毛根は元に戻せません
- 日焼けした肌や色素の濃い部位では、やけどが生じるリスクが高まります
- 硬毛化・増毛化が起こることがあります
- 回数を重ねても、毛が完全になくなることが保証されるものではありません
主な副作用
- 照射時の痛み
- 照射直後の赤み・ほてり・むくみ
- 毛のう炎
- 施術部位の乾燥・かゆみ
症状の程度や頻度には個人差があります。実際に受けられるかどうかは、医師の診察を受けたうえで判断してください。
まとめ
- バナー広告とリスティング広告は、限定解除の要件①を満たさない
- そのため、広告可能事項の範囲しか書けない。公式サイトより書ける内容が狭い
- 事例解説書の違反例は脱毛の広告で、「治療実績県内1位」が比較優良広告、値下げ表示が費用の強調と指摘されている
- 「通常価格◯◯円→割引価格◯◯円」という見せ方は控えるべきとされ、改善例は割引後の金額だけを書いている
- 検索に費用を払って上位表示させたものも、要件①を満たさない
- 広告は入口であり、判断は公式サイトの料金ページとカウンセリングで行う
出典
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」令和8年3月(2026-09-05確認)
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正(2026-09-05確認)
この記事の作られ方
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