美容医療のカウンセリングで確認すること|厚生労働省が2025年に示した違法事例から逆算する
2025年8月15日、厚生労働省は「美容医療に関する取扱いについて」という通知を出しました。自由診療である美容医療で違法事例が見られること、そして違法かどうかの判断基準が不明確で指導や取締りが難しい状況にあったことを受けたものです。
この通知には、何が問題とされているのかが具体的に書かれています。裏を返せば、カウンセリングで何を確認すればよいかがそこから逆算できます。
1. 医師が診察しているか
通知が名指しした事例の一つが、「カウンセラーのみと相談し決定した治療内容をそのまま医師が実施する」というものです。
通知は、無資格者が「患者の個別の状況に応じて医学的な判断を行い、これを伝達する行為」を禁止しています。治療方法の選択決定は、医師が主体的に行う必要があるということです。
確認すること:
- カウンセリングの中で、医師の診察を受ける時間があるか
- 施術の内容・回数・リスクについて、医師本人から説明を受けたか
- 医師の説明が、契約を決めた後ではなく決める前にあるか
カウンセラーが料金プランや支払方法を説明すること自体は問題ありません。問題になるのは、医学的な判断にあたる部分をカウンセラーが行ってしまうことです。
2. リスクと副作用の説明があるか
自由診療の内容をウェブサイトで広告するには、医療広告等ガイドラインの限定解除要件として、治療内容・標準的な費用・治療期間及び回数に加えて、主なリスクと副作用の情報提供が必要です。
2025年の通知も、問い合わせ先を明示したウェブサイトで広告する場合であっても、自由診療で行われる治療の内容・費用・リスク・副作用等に関する詳細な事項が情報提供されていない場合は違反になるとしています。
確認すること:
- 起こりうるリスクと副作用を具体的に説明されたか
- トラブルが起きた場合、どこで・誰が対応するのか
- 追加の処置や薬が必要になった場合の費用
説明が「まれに赤みが出ることがあります」だけで終わる場合は、こちらから具体的に聞いてください。
3. 費用の総額が明示されているか
ガイドラインは、治療の名称や最低限の治療内容・費用だけを紹介して患者を誤認させ不当に誘引すべきではない、としています。標準的な費用が明確でない場合は、最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すことが求められています。
確認すること:
- 提示された金額は税込か
- 麻酔代・初診料・薬代・キャンセル料は含まれるか
- コース終了後に追加が必要になった場合、1回あたりいくらか
- 分割払いを使う場合、手数料を含めた支払総額はいくらか
4. 広告表現が規制の範囲に収まっているか
通知は、医療広告規制違反として次を挙げています。
絶対に安全
必ず綺麗になる
日本一
No.1
加工・修正した術前術後写真の掲載、広告可能事項となっていない治療内容の広告、患者の体験談を誘引目的で紹介する行為も違反とされています。
これらがサイトや院内資料に見られる場合、そのクリニックが規制を把握していない、あるいは把握したうえで無視している可能性があります。施術の質と直結するわけではありませんが、判断材料の一つにはなります。
詳しくは美容クリニックの広告の読み方で整理しています。
5. その場で契約を求められていないか
医療広告等ガイドラインに関するQ&Aは、費用を強調した広告は品位を損ねるもので、医療に関する広告として適切ではなく、厳に慎むべきものとしています。
「今日契約すれば割引」という提示を受けたときは、いったん持ち帰る判断をして構いません。ヒゲ脱毛のように期間1か月超・金額5万円超の美容医療契約であれば、書面を受け取った日から8日間はクーリング・オフができ、その後も契約期間中はいつでも中途解約できます。
ただし、解約に伴う手続きの手間は残ります。決められないなら決めずに帰る、というのが最も負担の少ない選択です。
6. 診療録について知っておく
通知は、医師が遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載し、5年間保存しなければならないとしています。また、患者等が診療録の開示を求めた場合、医療機関は原則としてこれに応じる必要があるとされています。
万一トラブルが生じた場合、何が行われたかを確認する手段があるということです。実務上使う場面は多くありませんが、知っておくと安心材料になります。
持っていくと役に立つもの
- 服用中の薬・サプリメントのリスト(AGAの相談では特に重要です)
- 聞きたいことを書き出したメモ
- 提示された金額を書き留めるもの
その場で覚えきれる情報量ではありません。見積書を書面でもらえるかを聞いておくと、持ち帰って比較できます。
確認したいことチェックリスト
- 医師本人の診察と説明が、契約前にあるか
- リスク・副作用を具体的に説明されたか
- トラブル時に誰が対応するか
- 税込の総額はいくらか。何が含まれ、何が別料金か
- コース終了後の追加1回あたりの料金
- 分割払いの手数料込みの支払総額
- 途中でやめる場合の条件
- 見積書を書面でもらえるか
治療のリスクと副作用
ヒゲ脱毛もAGA治療も自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。
ヒゲ脱毛では、やけど・硬毛化・色素沈着といったリスクと、照射時の痛み・赤み・毛のう炎などの副作用があります。AGA治療では、性機能に関する副作用や肝機能値の異常が報告されており、中止すると効果は消失します。
いずれも症状の程度や頻度には個人差があります。受けられるかどうかは、必ず医師の診察を受けたうえで判断してください。
まとめ
- 医学的な判断はカウンセラーではなく医師が行う必要がある。契約前に医師の説明があるか確認する
- リスク・副作用の具体的な説明がないまま費用だけが提示される状態は、規制上も問題がありうる
- 税込の総額と、含まれないものを確認する
- 「絶対に安全」「必ず綺麗になる」「No.1」は、通知が名指しした違反表現
- その場で決めなくてよい。1か月超・5万円超の美容医療契約は8日間のクーリング・オフができる
- 診療録は5年間保存され、患者は開示を求められる
出典
- 厚生労働省「美容医療に関する取扱いについて」令和7年8月15日 医政発0815第21号(2026-08-18確認)
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正(2026-08-18確認)
- 消費者庁「特定継続的役務提供」特定商取引法ガイド(2026-08-18確認)
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