ワキ汗の治療はどこまで分かっているか|診療指針のマイクロ波治療は推奨度2
当サイトのメンズのワキ脱毛で、脱毛では汗の量もニオイも変わらないと書きました。レーザーが反応するのは毛のメラニンで、汗を出す汗腺は別の器官だからです。
そこで記事は終わっていました。「では何をするのか」を書いていなかったので、ここで補います。
美容医療診療指針は、脱毛治療とは別の章で腋窩多汗症を扱っています。読むと、脱毛の章とは推奨度の付き方がはっきり違いました。
まず「全身性かどうか」を分ける
指針は多汗症を2つに分けています。
- 全身性多汗症…全身の発汗が増加する
- 局所性多汗症…体の一部に限局して発汗量が増加する
そして重要な但し書きがあります。
全身性多汗症の場合、甲状腺機能亢進症などの代謝異常や神経疾患、薬剤性などがあり、原疾患がある場合にはそちらの治療を優先する
汗が多いこと自体が別の病気のサインであることがある、ということです。美容目的の施術に進む前に、まずここが分かれ道になります。
原発性腋窩多汗症の診断基準
指針が引いている診断基準(Hornbergerら)は、次の形です。
原因不明の局所の過剰な発汗が6か月以上認められ、かつ以下の6項目のうち2項目以上が該当するもの。
- 発症が25歳以下であること
- 対称性に発汗がみられること
- 睡眠中は発汗しないこと
- 1週間に1回以上の多汗のエピソードがあること
- 家族歴がみられること
- それらによって日常生活に支障があること
3番目は見落とされやすい項目です。寝ている間も汗をかくなら、原発性ではない可能性が上がります。
有病率も示されています。米国の疫学調査では全人口の2.8%が原発性多汗症で、そのうち50.8%が腋窩。本邦では腋窩多汗症の有病率を5.75%とする報告があるとしています。
珍しい状態ではありません。
治療の選択肢と、その共通点
指針が挙げている治療をまとめます。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 外用 | 塩化アルミニウム外用療法(一般的)/ソフピロニウム臭化物ゲル(抗コリン作用薬、承認済み) |
| 注射 | A型ボツリヌス菌毒素の局所皮下注入 |
| その他 | 水道水イオントフォレーシス/プロパンテリン臭化物の内服 |
| 外科 | 胸腔鏡下交感神経遮断術/腋臭症に準じた汗腺除去手術 |
| 機器 | マイクロ波治療 |
外用・注射・その他について、指針ははっきり書いています。
これらは全て根治的な治療法ではなく治療を継続していく必要がある
AGA治療で「中止すると効果は消失する」と書かれているのと同じ構造です → AGA治療をやめたらどうなるか
マイクロ波治療は推奨度2
機器による治療について、指針はCQを立てています。
推奨度:2(治療を希望する患者には、行うことを弱く推奨する) 効果はボツリヌス菌毒素製剤注入療法に匹敵し、熱傷や瘢痕形成など合併症の頻度も少なく、安全性は比較的高い。腋窩多汗症治療の選択肢の1つとして行うことを弱く推奨できる。
ここが脱毛の章との違いです。脱毛のCQはアレキサンドライトもダイオードもNd:YAGも蓄熱式も、すべて推奨度1(強く推奨)でした。 多汗症のマイクロ波は2です。
エビデンスの内訳も示されています。A:0件/B:2件/C:5件。最も質の高いAが0件、という並びです。
仕組み
マイクロ波は電磁波のうち300MHzから300GHzの周波数です。水に吸収されやすく、水分子を介して組織を加熱します。これによって水分の豊富な汗腺組織が加熱され、変性します。
使われる周波数は電波法の規制を受け、産業科学医療用(ISMバンド)に割り当てられた5.8GHzです。指針は、電子レンジの2.45GHzより水に吸収されやすいと説明しています。
外用や内服のように一時的なものではなく、長期に結果を得ることが可能である、とされています。
同じ12か月後で、38.9%と90.3%
指針が引く臨床試験の数字を並べます。効果の指標はHDSS(多汗症の重症度スケール)で、2点以上の改善を効果ありとしています。
| 報告 | 3か月後 | 6か月後 | 12か月後 |
|---|---|---|---|
| Glaser(偽治療120例 vs 治療81例) | — | 67% | — |
| Kaminaka(26例・左右比較) | 83.3% | 61.1% | 38.9% |
| Hong(30日で改善が乏しければ6か月以内に3回まで) | 93.6% | — | 90.3% |
12か月後の数字が、38.9%と90.3%で倍以上違います。
理由はプロトコルです。Kaminakaは1回の照射、Hongは改善が乏しければ最大3回繰り返すという設計でした。
脱毛の章でも同じことが起きていました。数字だけを取り出して比べられない、という点は共通しています → 「脱毛率◯%」は、いつ測ったかで変わる
「効果◯%」と示されたら、何回受けた結果か、いつ測ったかを確認してください。
なお、若い世代を対象にした報告(18〜29歳の24例)では、QOL・重症度に加えて全般性不安と社会性不安の項目でも改善が得られたとされています。
合併症は「頻度は低いが、重いものがある」
指針の記載を正確に引きます。
本治療の副作用・合併症としては、軽微な熱傷やそれによる瘢痕のことが多いが、汗腺膿瘍や末梢神経障害が報告されている。極めて稀に腕神経叢損傷への直接損傷による、正中神経や尺骨神経などの障害が生じることが報告されている。
そして、その条件まで書かれています。
これは、重度のるい痩患者で生じ易く、局所麻酔薬の大量注入法(Tumescent法)が推奨される
るい痩=やせが強い状態です。脂肪が薄いと神経までの距離が近くなるため、リスクが上がるという理屈です。
痩せている人ほど、麻酔の方法を含めて確認する意味があります。
保険は効かない
指針のまとめにある一文です。
マイクロ波治療器は医療承認を取得している機器もあるが、保険適用外である
国内承認機器があること(=未承認機器ではない)と、保険が効くことは別です。全額自己負担になります。費用の見方は「◯円〜」だけでは要件を満たしていない、契約の注意点は美容医療の契約トラブルと相談先へ。
カウンセリングで聞くこと
- 全身性の可能性を除外したか(睡眠中の発汗、服薬の有無、甲状腺の検査)
- 診断基準の6項目のうち、いくつ当てはまるか
- 外用薬(塩化アルミニウム、ソフピロニウム臭化物ゲル)を先に試す選択肢はあるか
- 何回の照射を前提とした料金か(1回か、追加照射を含むか)
- 麻酔の方法(体格によってはTumescent法が推奨されるとされています)
- 総額と、効果が出なかった場合の扱い
3番目が実務的です。承認された外用薬があり、そちらのほうが侵襲が小さいので、順番として無理がありません。
なお、ワキのニオイ(腋臭症)は多汗症と重なる部分がありますが、指針が第4章で扱っているのは多汗症です。ニオイの治療については、この指針からは推奨度を引けません。
施術のリスクと副作用
腋窩多汗症に対するマイクロ波治療は自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。
主なリスク
- 診療ガイドラインの推奨度は2(弱く推奨)で、エビデンスの内訳はA:0件・B:2件・C:5件です
- 効果の報告には幅があり、12か月後で38.9%とする報告と90.3%とする報告があります
- 汗が多いこと自体が、甲状腺機能亢進症などの別の疾患による場合があります
- 極めて稀に腕神経叢の損傷による正中神経・尺骨神経の障害が報告されており、やせが強い方で生じやすいとされています
- 外用・注射などの他の治療は根治的ではなく、継続が必要とされています
主な副作用
- 軽微な熱傷と、それによる瘢痕形成
- 汗腺膿瘍
- 末梢神経障害
- 施術部位の腫れ・痛み
症状の程度や頻度には個人差があります。実際に受けられるかどうかは、医師の診察を受けたうえで判断してください。
まとめ
- 脱毛では汗の量は変わらない。多汗症は診療指針でも別の章で扱われている
- まず全身性かどうかを分ける。原疾患があればそちらの治療が優先される
- 原発性腋窩多汗症の診断基準は、6か月以上の過剰な発汗+6項目のうち2項目以上
- 本邦の腋窩多汗症の有病率は5.75%という報告がある
- 外用・注射・イオントフォレーシス・内服は、いずれも根治的ではなく継続が必要
- マイクロ波治療の推奨度は2(弱く推奨)。脱毛のCQがすべて推奨度1だったのとは違う
- 12か月後の改善率は38.9%と90.3%で報告により倍以上違う。照射回数のプロトコルが違うため
- 極めて稀だが腕神経叢損傷の報告があり、やせが強い人で生じやすいとされる
- 国内承認機器はあるが、保険適用外
出典
- 日本美容外科学会ほか関連5学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」第4章 腋窩多汗症(2026-09-06確認)
この記事の作られ方
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