美容医療の契約トラブルと相談先|クーリング・オフを実際に出す手順
契約したその夜に冷静になって後悔する。解約を申し出たら渋られる。想定外の解約金を提示される——美容医療の契約トラブルは、国民生活センターに継続的に相談が寄せられている分野です。
権利があることと、権利を行使できることは別です。この記事では「知っている」を「実際にできる」に変えるための、具体的な手順を書きます。
前提: この契約はクーリング・オフできるか
医療脱毛を含む美容医療の契約は、期間が1か月を超え、金額が5万円を超える場合、特定商取引法の「特定継続的役務提供」にあたります。コース契約であればほとんどが該当します。
該当する契約なら、
- クーリング・オフ: 法定の書面(概要書面・契約書面)を受け取った日から数えて8日以内なら、無条件で契約を解除できます。支払ったお金は全額戻り、違約金もかかりません
- 中途解約: 8日を過ぎても、契約期間中はいつでも理由を問わず解約できます。事業者が請求できるのは、提供済みの役務の対価と、法定上限(美容医療は施術開始前2万円、開始後は5万円または契約残額の20%の低い方)までです
1回払いの都度払い(コース契約でない)の場合はこの制度の対象外ですが、その場合はそもそも解約でもめる構造になりにくいはずです。
クーリング・オフを出す手順
重要なのは、電話や口頭で「やめたい」と伝えるだけで済ませないことです。通知は記録が残る形で行い、証拠を保管します。2022年6月からは、書面に加えてメールなどの電磁的記録による通知も認められています。
はがきで出す場合
- はがきに次を書きます。契約を特定できる情報+解除の意思+発信日が骨子です。
契約解除通知 契約年月日: ◯年◯月◯日 契約者名: ◯◯◯◯ 契約内容: 医療脱毛◯回コース 契約金額: ◯◯円 上記契約を解除します。支払済みの◯◯円を返金してください。 ◯年◯月◯日(発信日)
- 出す前に、はがきの両面をコピーします
- 郵便局から特定記録郵便または簡易書留で送ります(発信の記録が残ります)
- コピーと郵便局の受領証を、少なくとも契約関係が完全に終わるまで保管します
クレジット(医療ローン)を組んでいる場合は、クリニックとローン会社の両方に通知を出します。ローン側を放置すると引き落としが続いてしまいます。
メールで出す場合
書く内容ははがきと同じです。送信後に送信済みメールを削除せず保管します。事業者がウェブ上に解約フォームを用意している場合はそれを使い、完了画面や受付メールをスクリーンショットで残します。
期限との関係では、8日以内に「発信」していれば有効です。相手に届いた日ではなく出した日が基準なので、期限ぎりぎりでも記録の残る方法で発信してください。
よくある押し返しと、その答え
- 「施術の予約を入れているのでキャンセル料がかかる」 — クーリング・オフは無条件の解除です。期間内であれば損害賠償や違約金の請求は認められません
- 「解約は来院して手続きしてください」 — 来院は解約の条件ではありません。書面または電磁的記録の発信で効力が生じます
- 「コース契約は中途解約できない規約です」 — 特定継続的役務提供に該当する契約なら、法律上の中途解約権は契約書の記載に優先します
- 「解約金として◯十万円かかる」 — 美容医療の中途解約の上限(開始後: 5万円または残額の20%の低い方+提供済み分の対価)を超える請求は認められません
その場で言い合う必要はありません。「持ち帰って確認します」と切り上げて、次の相談先に電話してかまいません。
相談先
- 消費者ホットライン 188(いやや) — 最寄りの消費生活センターにつながります。契約書を手元に置いて電話すると話が早いです。解約通知の書き方も相談できます
- 国民生活センター・各地の消費生活センター — あっせん(事業者との間に入る調整)まで対応してもらえる場合があります
- 健康被害が出ている場合は、まず医療機関で治療を受け、診断書や領収書を保管したうえで相談してください。国民生活センターの資料でも、やけどなどは早期の治療が重要とされています
なお、施術による健康被害と契約トラブルが同時に起きている場合(施術でトラブルがあったから解約したい等)も、188で一緒に相談できます。
トラブルを予防する側の習慣
- 契約書・概要書面・見積書・領収書はすべて保管する(クーリング・オフの起算日は書面の受領日です)
- その場で契約しない。カウンセリングで確認することのチェックリストを使う
- 支払い方法ごとの解約時の扱い(一括・分割・医療ローン)を契約前に聞いておく
- 「今日決めれば割引」に期限内の判断を左右されない
まとめ
- 1か月超・5万円超の美容医療契約は、8日以内のクーリング・オフと、期間中いつでもの中途解約ができる
- 通知は記録が残る形で。はがきなら両面コピー+特定記録/簡易書留、メールなら送信記録を保管
- 医療ローンがある場合はローン会社にも通知する
- 8日の期限は「発信日」基準。ぎりぎりでも記録の残る方法で出す
- 押し返されても、その場で争わず188へ。契約書を手元に置いて電話する
出典
- 消費者庁「特定継続的役務提供」特定商取引法ガイド(2026-08-22確認)
- 消費者庁「特定商取引法における電磁的記録によるクーリング・オフに関するQ&A」特定商取引法ガイド(2026-08-22確認)
- 消費者庁「クーリング・オフできます」リーフレット(2026-08-22確認)
- 国民生活センター「なくならない脱毛施術による危害」2017年5月11日(2026-08-22確認)
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