「脱毛率◯%」は、いつ測ったかで変わる|診療指針が引く臨床試験を読む
医療脱毛の効果を数字で示されると、比べられる気がします。「脱毛率90%」と「脱毛率50%」なら、前者のほうがよさそうに見えます。
美容医療診療指針が引用している臨床試験を並べて読むと、その比較が成り立たないことがわかります。同じ試験の中で、測る時期を変えるだけで数字が半分になっているからです。
1か月後71%、6か月後35.7%
いちばんはっきりしているのがこの報告です。
49名の腋窩を対象に、片側にダイオードレーザー、反対側にNd:YAGレーザーを当て、1か月ごとに計5回治療したブラインド無作為化試験です。
| 評価時点 | ダイオード | Nd:YAG |
|---|---|---|
| 1か月後 | 71.0% | 82.3% |
| 6か月後 | 35.7% | 54.2% |
どちらもおよそ半分に落ちています。
理由は毛周期です。レーザーが効くのは成長期の毛だけなので、施術直後に減って見えても、休止期だった毛が後から出てきます → 部位ごとの毛周期と回数
つまり、「いつ測ったか」を書いていない脱毛率には意味がありません。
6か月以上あけて測るとどうなるか
では時間をおいた数字はどうか。指針が引いているシステマティックレビューがあります。1998年から2003年の臨床試験を対象に、最後の治療から少なくとも6か月以上経過した時点での脱毛効果をまとめたものです。
| 機種 | 脱毛効果 |
|---|---|
| ダイオード | 57.5% |
| アレキサンドライト | 54.7% |
| ルビー | 52.8% |
| Nd:YAG | 42.3% |
このレビューは、ダイオードとアレキサンドライトを推奨し、Nd:YAGの効果が最も低いとしています。
コクランのレビュー(444人、11件の無作為化比較試験)も近い数字です。アレキサンドライトとダイオードで治療後6か月までに約50%の脱毛、IPL・Nd:YAG・ルビーは効果がほとんどないという結果でした。
ただしこのレビューには、正直な但し書きが付いています。
いずれも方法論的な質は高くなく多くの試験が除外された
根拠として引かれている試験そのものが、必ずしも強くないということです。
数字が並ばない
厄介なのは、報告ごとに順位が入れ替わることです。
後ろ向き研究で75名を最終治療の3か月後に評価したものでは、平均脱毛率がこうなっています。
- アレキサンドライト 65.6%
- ダイオード 46.9%
- Nd:YAG 42.4%
一方、さきほどの腋窩の試験ではNd:YAGのほうが有意に高かったという結果でした。
条件が違えば結果が変わります。部位、肌の色、照射条件、評価時期、そもそもの試験デザイン。 単独の数字を機種の優劣として読むことはできません。
各機種の推奨度と特性は脱毛の機械は何が違うのかにまとめました。
回数は「4回から22回」
指針が引くもう1つの報告が、回数の現実を示しています。
Fitzpatrickスキンタイプ Ⅳ〜Ⅵ の150名を対象に、顔・腋窩・下肢・腹部・胸のいずれかをNd:YAGレーザーで脱毛したものです。被験者が満足のいくレベルの脱毛が達成されれば治療を中止という設計でした。
- 治療の平均回数:8.9回
- 範囲:4回〜22回
- 平均脱毛率:54.3%
- 14%の患者に合併症(多くは一過性の色素沈着)
同じ設計の試験で、4回で満足した人と22回かかった人がいます。 「◯回で終わります」という説明が個人差を吸収できないことが、この幅に出ています。
なおこの試験では、顔は4週間ごと、他の部位は6週間ごとに照射しています。顔の間隔が短いのは、ヒゲ脱毛を考えるうえで参考になります → ヒゲ脱毛は何年かかるのか
長期のデータ
では、いったん減った毛はどのくらい戻らないのか。指針が引く長期の追跡はこれです。
2施設でロングパルスアレキサンドライトレーザーによる脱毛を受けた948人の調査で、最終治療から11.5±2年の経過を追えたのが173人。そのうち152人(87.9%)で脱毛状態が維持されていました。
指針はこれを、永続的な脱毛効果と高い患者満足度が得られる安全で有効な方法と結論した、と紹介しています。
ただし読むときは2点を押さえてください。
- 948人中173人しか追跡できていません。 連絡がついた人だけの数字です
- 87.9%は「維持できていた人の割合」であって、毛が87.9%減ったという意味ではありません
「永久脱毛」という言葉の定義はヒゲ脱毛は何回で終わるのかに整理しました。
広告の数字との関係
ここまでの数字は、すべて論文として公表され、対象人数と評価時期が書かれているものです。
クリニックの広告に出てくる「脱毛率◯%」「満足度◯%」は、これとは別物です。医療広告のルールでは、患者満足度調査の結果そのものは広告できず、効果の数字も調査方法を示さなければ虚偽広告として扱われます → 「満足度99%」「症例10万件」の読み方
数字を見たら、対象人数・評価時期・部位・肌の条件がセットで書かれているかを見てください。 書かれていなければ、比較の材料になりません。
ヒゲに当てはめるときの注意
上に挙げた試験は、腋窩・下肢・胸腹部が中心です。ヒゲのデータではありません。
ヒゲは毛が太く密度が高く、皮脂腺も発達しています。一般に必要な回数は多くなりやすい部位です。また、顔は照射間隔を短くとる例が上の試験にもありました。
痛みについてはヒゲ脱毛は痛いのか、部位の範囲の違いはヒゲの「3部位」は院ごとに違うへ。
施術のリスクと副作用
ヒゲ脱毛を含む医療脱毛は自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。
主なリスク
- 施術直後の脱毛率は時間の経過とともに下がることが報告されています
- 必要な回数には大きな個人差があり、同じ試験内で4回から22回の幅が報告されています
- 一度破壊された毛根は元に戻せません
- 日焼けした肌や色素の濃い部位では、やけどが生じるリスクが高まります
- 硬毛化・増毛化が起こることがあります
- 回数を重ねても、毛が完全になくなることが保証されるものではありません
主な副作用
- 照射時の痛み
- 照射直後の赤み・ほてり・むくみ
- 毛のう炎
- 炎症後の色素沈着(多くは一過性と報告されています)
- 施術部位の乾燥・かゆみ
症状の程度や頻度には個人差があります。実際に受けられるかどうかは、医師の診察を受けたうえで判断してください。
まとめ
- 同じ試験で、脱毛率が1か月後71.0%から6か月後35.7%に落ちた報告がある
- 理由は毛周期。休止期だった毛が後から出てくる
- 6か月以上あけた時点のレビューでは、機種ごとに42〜57%程度
- コクランのレビューは、根拠となる試験の方法論的な質が高くないと明記している
- 報告ごとに機種の順位が入れ替わる。単独の数字を優劣として読めない
- 満足するまで治療した試験では、平均8.9回・範囲4〜22回だった
- 長期では、最終治療から11.5年後に173人中152人(87.9%)が脱毛状態を維持
- 数字を見るときは、対象人数・評価時期・部位・肌の条件がセットになっているか
出典
- 日本美容外科学会ほか関連5学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」第5章 脱毛治療(2026-09-05確認)
- 国民生活センター「なくならない脱毛施術による危害」2017年5月11日(2026-09-05確認)
この記事の作られ方
この記事は医師の監修を受けていません。医療行為の推奨ではなく、厚生労働省・消費者庁・国民生活センター・学会の診療ガイドライン、 および各クリニックが公表している情報を整理したものです。
記載の根拠は記事末の出典に、確認日とあわせて示しています。 効果・副作用・適応の判断は個人差が大きく、記事の情報で代替できるものではありません。 治療の可否は必ず医師の診察を受けたうえで判断してください。
ご確認ください
当サイトは医療機関ではなく、掲載内容は各クリニックの公式サイトおよび公的機関が公表する情報を整理したものです。 個別の診断・治療方針を示すものではなく、特定の治療を推奨するものでもありません。 効果やリスクの現れ方には個人差があります。治療を受けるかどうかは、必ず医師の診察を受けたうえでご判断ください。
料金・施術内容は変更される場合があります。最新かつ正確な情報は各クリニックの公式サイトをご確認ください。 当サイトの情報を利用して生じた損害について、当サイトは責任を負いかねます。