脱毛の機械は何が違うのか|3学会の診療指針が示した推奨度で読む
クリニックのサイトには機械の名前が並んでいますが、それが何を意味するのかは書かれていないことがほとんどです。「最新機種」と言われても比べようがありません。
実は、この領域には学会の診療指針があります。 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会が、厚生労働科学研究補助金による研究として作成した「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」です。この指針には第5章 脱毛治療があり、機器ごとに推奨度が示されています。
指針が示した推奨度
第5章第1節「レーザー等機器による脱毛治療」の5つのクリニカルクエスチョンと、その推奨度です。
| 機器 | 推奨度 |
|---|---|
| ロングパルスアレキサンドライトレーザー | 1(行うことを強く推奨する) |
| ダイオードレーザー | 1(行うことを強く推奨する) |
| Nd:YAGレーザー | 1(行うことを強く推奨する) |
| 蓄熱式脱毛 | 1(行うことを強く推奨する) |
| IPL | 2(行うことを弱く推奨する) |
推奨度は「治療を希望する患者には」という条件付きの表現になっています。
読み取れることは単純です。レーザー系4種は横並びで推奨度1、そしてIPLだけが推奨度2。つまり「どのレーザーが優れているか」という問いには、この指針は答えを出していません。優劣ではなく特性の違いとして書かれています。
それぞれの特性
指針の推奨文から、要点を引きます。
ロングパルスアレキサンドライトレーザー
皮膚冷却装置による表皮保護を併用することで、熱傷などの合併症を避けながら比較的少ない疼痛で効果を得やすい、とされています。一方で注意も明記されています。
脱毛部位,毛包の深度,毛の太さや色調,皮膚の色調(Fitzpatrick のスキンタイプⅣ〜Ⅵ)などの要素によっては脱毛効果が劣る場合や硬毛化を生じる可能性があるため,多様化した脱毛希望部位すべてに万能とは言えず注意を要する
「すべてに万能とは言えず」と学会指針が書いている点は、押さえておく価値があります。
ダイオードレーザー
指針は、有色人種が大多数を占める日本でレーザー脱毛を行うには適切な波長・パルス幅・出力・クーリングデバイスが必要だとしたうえで、有色人種の脱毛にも使用できるよう開発されたダイオードレーザーについて、FDAで承認されてから25年近くの臨床使用が行われ、比較的安全に施術できることが報告されているとしています。日本での臨床使用経験は20年程度、最初の脱毛用ダイオードレーザーが厚生労働省の承認を得てから10数年とされています。
Nd:YAGレーザー
Nd:YAG レーザーはスキンタイプによらず脱毛に有効であり
スキンタイプによらずという点が特徴です。肌の色が濃い場合や日焼けがある場合に、この特性が効いてきます → 日焼けと脱毛
蓄熱式脱毛
有効であり、疼痛が少ないため治療を希望する患者には行うことを推奨する、とされています。痛みが不安な人にとっての選択肢になります → 痛みと麻酔
IPL(推奨度2)
単一波長ではないためメラニンへの選択性は脱毛用レーザーと比較すると劣るが,1 回あたりの照射面積が広く,レーザーと比較して痛みも少ない.脱毛用レーザーと比較すると脱毛効率はやや劣る.
IPLはエステの光脱毛でも使われる方式です。指針が「メラニンへの選択性が劣る」「脱毛効率はやや劣る」としつつ、照射面積の広さと痛みの少なさを利点として挙げているのは、この方式の位置づけをよく表しています。医療とエステの線引きは医療脱毛とサロン脱毛の違いへ。
各クリニックが何を使っているか
当サイトが掲載しているクリニックの公式記載を並べます。方式の記載は各院の公式サイトによるものです。
| クリニック | 公式サイトの記載 |
|---|---|
| メンズリゼ | ジェントルマックスプロ/ジェントルヤグプロ-U(熱破壊式×YAGレーザー) |
| レジーナクリニックオム | ジェントルマックスプロ(方式の記載は確認できず) |
| ゴリラクリニック | ジェントルMAX PRO/ジェントルヤグPRO(ネオジウムヤグレーザー 波長1064nm・熱破壊式) |
| フレイアクリニックメンズ | メディオスターシリーズ(蓄熱式・熱破壊式を使い分け) |
| 湘南美容クリニック | ジェントルレーズプロ/ジェントルマックスプロ/スプレンダーX/アバランチレイズ(熱破壊式・アレキサンドライト/ヤグ) |
指針の推奨度に照らすと、いずれも推奨度1に位置づけられる方式を用いていることになります。詳細はクリニック一覧から各院のページで確認できます。
湘南美容クリニックは、複数の機器を扱っており、アレキサンドライトレーザーとヤグレーザーの両方の波長を備えた機器ではどの波長を使うか選べる旨も記載しています。
「熱破壊式」と「蓄熱式」
クリニックのサイトでよく見る対比です。指針のCQは蓄熱式脱毛を独立の項目として立て、推奨度1としています。
一般に説明されている違いは次のとおりです。
- 熱破壊式…毛根に強いエネルギーを一度に加える方式。太い毛に反応しやすいとされます
- 蓄熱式…弱いエネルギーを繰り返し照射して熱を蓄える方式。指針は疼痛が少ないとしています
指針はどちらも推奨度1としており、優劣ではなく選択肢という扱いです。フレイアクリニックメンズのように両方を使い分けると記載している院もあります。
機械で選ぶ、の限界
ここまで書いたうえで、正直な話をします。機械の名前だけでクリニックを選ぶことはできません。
理由は3つです。
① 推奨度1が横並びである。 指針は4方式を同じ推奨度に置いています。「この機械だから優れている」という主張には、この指針は根拠を与えません
② 出力と判断のほうが効く。 国民生活センターの資料に寄せられた医師の解説は、医療機関では医師が肌の色や肌質からレーザーの出力や照射時間を判断し、テスト照射を行うなどして細心の注意を払っていると説明しています。同じ機械でも、使い方で結果が変わるということです
③ 万能な方式はない。 指針自身が、アレキサンドライトについて「すべてに万能とは言えず注意を要する」と書いています
したがって、機械の情報は「自分の肌質・毛質に合うか」を医師に相談するための材料として使うのが正しい使い方です。日焼けしやすい、肌の色が濃い、痛みに弱い——そうした条件があるなら、それを伝えて機械の選択を相談してください。
比較の手順全体はクリニックの選び方にまとめています。
指針そのものについて
念のため、この指針の位置づけも書いておきます。
令和3年度厚生労働科学研究補助金による研究として作成され、未承認医薬品・材料・機器を使用する頻度の高い顔面若返り治療、乳房増大術、腋窩多汗症治療、および脱毛治療について検討したものです。文献検索の範囲は2021年12月までに入手できる文献とされています。
推奨度・推奨文・解説文は、施術による利益のアウトカムと不利益のアウトカムのバランスを考慮して委員総意のもとに決定され、とくにリスクの高い施術には「行わないことを強く推奨する」等の表現で注意を喚起する方針が採られています。最終版は関係学会の理事会の承認を得ています。
つまり特定のメーカーや医療機関の宣伝ではなく、公的研究として作られた指針です。当サイトがこれを持ち出すのは、機械の話が売り文句になりやすい領域だからです。
施術のリスクと副作用
医療脱毛は自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。
主なリスク
- 脱毛部位・毛包の深度・毛の太さや色調・皮膚の色調によっては、脱毛効果が劣る場合や硬毛化を生じる可能性があります(美容医療診療指針)
- 一度破壊された毛根は元に戻せません
- 日焼けした肌や色素の濃い部位では、やけどが生じるリスクが高まります
- 施術後に一時的な色素沈着が生じることがあります
- 回数を重ねても、毛が完全になくなることが保証されるものではありません
主な副作用
- 照射時の痛み
- 照射直後の赤み・ほてり・むくみ
- 毛のう炎
- 施術部位の乾燥・かゆみ
症状の程度や頻度には個人差があります。実際に受けられるかどうかは、医師の診察を受けたうえで判断してください。
まとめ
- 3学会の美容医療診療指針に、脱毛治療の章があり機器ごとの推奨度が示されている
- アレキサンドライト・ダイオード・Nd:YAG・蓄熱式は推奨度1、IPLは推奨度2
- レーザー4種は横並び。指針は優劣ではなく特性の違いとして書いている
- Nd:YAGはスキンタイプによらず有効、蓄熱式は疼痛が少ないとされる
- アレキサンドライトについて指針は「すべてに万能とは言えず注意を要する」と明記
- 機械名だけでは選べない。自分の肌質・毛質を伝えて相談するための材料として使う
出典
- 日本皮膚科学会・日本形成外科学会・日本美容皮膚科学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」令和3年度厚生労働科学研究補助金(2026-08-26確認)
- ゴリラクリニック ヒゲ脱毛ページ(使用機器と方式の記載)(2026-08-26確認)
- 湘南美容クリニック メンズ脱毛ページ(使用機器と方式の記載)(2026-08-26確認)
- フレイアクリニックメンズ 公式サイト(使用機器と方式の記載)(2026-08-26確認)
この記事の作られ方
この記事は医師の監修を受けていません。医療行為の推奨ではなく、厚生労働省・消費者庁・国民生活センター・学会の診療ガイドライン、 および各クリニックが公表している情報を整理したものです。
記載の根拠は記事末の出典に、確認日とあわせて示しています。 効果・副作用・適応の判断は個人差が大きく、記事の情報で代替できるものではありません。 治療の可否は必ず医師の診察を受けたうえで判断してください。
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