蓄熱式と熱破壊式の違いを比較試験で見る|鼻下が苦手とされる理由
クリニックのサイトでよく見る対比が「熱破壊式」と「蓄熱式」です。蓄熱式は痛みが少ないと説明されます。
美容医療診療指針は蓄熱式を独立の項目として立て、推奨度1(強く推奨する)としています。では実際にどのくらい違うのか。 指針が引用している比較試験を並べると、数字で見えてきます。そして同時に、苦手な部位もはっきり書かれています。
仕組みの違い
指針の説明です。蓄熱式脱毛レーザーは2006年に開発されました。
- メラニンとヘモグロビンの吸光度に差がある波長を用いる
- 皮膚表面を接触冷却する
- 低フルエンスで高速反復照射する
- ハンドピースを動かしながら、1ユニットに一定量のエネルギーを入れる
対する従来の方式(指針では単発式と呼ばれています)は、高フルエンスによる単発照射で毛包を熱損傷させるに十分なエネルギーを一度に与えます。
蓄熱式は、低い出力を複数回当てて毛包全体に熱を蓄えていく方式です。
比較試験の数字
指針が引いている、同一人物の左右で比べた試験を並べます。同じ人の体で比べているので、条件のばらつきが小さい設計です。
| 試験 | 対象 | 脱毛効果(蓄熱式/単発式) | 痛みVAS(蓄熱式/単発式) |
|---|---|---|---|
| Braun | 25人・下肢片側 | 86% / 91% | 3 / 5 |
| Koo | 20人・腋窩または下肢 | 有意差なし | 蓄熱式が有意に少ない |
| Li | 98人・スキンタイプⅢ〜Ⅴ | 90.2% / 87%(有意差なし) | 2.75 / 6.75 |
読み取れることは2つです。
① 痛みは一貫して蓄熱式が低い。 3試験すべてで同じ方向に出ています。Liの試験では2.75対6.75で、統計的にも有意差が付いています。
② 効果は「有意差なし」が続く。 Braunでは86%対91%で単発式がやや高く、Liでは90.2%対87%で蓄熱式がやや高い。どちらが上とも言えない結果です。
なおBraunの試験では、治療時間も測られています。蓄熱式が平均20分、単発式が平均26分でした。
痛みの感じ方そのものについてはヒゲ脱毛は痛いのかにまとめています。
日焼けした肌での比較
もう1つ、規模の大きい試験があります。スキンタイプⅢ〜Ⅴの368人を5部位のいずれかに割り当て、2か月ごとに蓄熱式を5回施術し、最終施術から6か月後(初回から14か月後)まで追跡したものです。
- 日焼けをした82人と、していない人の間で有害事象に差はなかった
- 患者満足度は5段階評価で3以上をつけたものが全体の95%
- ほとんどの患者に施術後の紅斑と浮腫がみられたが、一過性だった
- 15人で生検したところ、9人で表皮基底層にわずかに空胞変性。真皮上層と毛包周囲に浮腫と炎症性細胞浸潤
日焼け肌で差が出なかったという結果は、蓄熱式の特徴としてよく挙げられる点です。ただし「日焼けしていても受けられる」と読み替えないでください。 日焼け直後の肌への照射は別の問題です → 日焼けと脱毛
一部に色素沈着が出た理由
同じ試験で、一部の部位に色素沈着が出ています。指針はその原因の推定まで書いています。
面積が小さいため、ハンドピースを連続的かつ均一に移動することが難しく、技術的な問題が考えられた
方式の限界ではなく、動かし方の問題と見ているわけです。ここが次の話につながります。
鼻下と眉周囲が苦手とされる理由
指針の結論部分に、はっきりした記述があります。
蓄熱式脱毛レーザー機器はハンドピースを動かしながら施術するため、施術者の技量により効果に差が出る可能性は否めない。また、上口唇や、眉周囲など狭い照射部位ではハンドピースを動かすことが十分にできないこともあり、高フルエンス、単射式脱毛と併用することもある。
上口唇=鼻下です。ヒゲ脱毛でいえば、口ひげの部分。
蓄熱式は「動かしながら当てる」方式なので、動かす面積がない場所では設計どおりに働きません。鼻の下は、まさにその代表です。
そして指針が示す対処が、高フルエンスの単発式との併用です。
カウンセリングで聞くこと
以上を質問に直します。
- その院は蓄熱式と単発式のどちらを持っているか。両方あるか
- 鼻下には何を使うか。併用はあるか
- 部位によって機器を変えるか
- 麻酔は使えるか。1回いくらか(料金ページの判定)
2番目が実質的です。「蓄熱式なので痛くありません」という説明だけで終わるなら、鼻下の扱いを聞き返す価値があります。
各機種の推奨度と特性は脱毛の機械は何が違うのか、脱毛率の数字の読み方は「脱毛率◯%」は、いつ測ったかで変わるへ。
機種で決めきらない
最後に、指針の立場を確認しておきます。指針はアレキサンドライト・ダイオード・Nd:YAG・蓄熱式・IPLのいずれについても推奨度を付けており、蓄熱式だけを上に置いてはいません。
方式は選択肢であって、優劣ではありません。実際の結果を左右するのは、部位・毛の状態・肌の色・照射条件、そして施術者です。指針自身が「施術者の技量により効果に差が出る可能性は否めない」と書いています。
比べる項目の決め方はメンズ美容クリニックの選び方にまとめました。
施術のリスクと副作用
ヒゲ脱毛を含む医療脱毛は自由診療で、公的医療保険は適用されず全額自己負担です。
主なリスク
- 蓄熱式は施術者の技量により効果に差が出る可能性があると指針に記載されています
- 上口唇や眉周囲など狭い部位では、蓄熱式の特性を十分に発揮できないことがあります
- 一度破壊された毛根は元に戻せません
- 日焼けした肌や色素の濃い部位では、やけどが生じるリスクが高まります
- 硬毛化・増毛化が起こることがあります
- 回数を重ねても、毛が完全になくなることが保証されるものではありません
主な副作用
- 照射時の痛み
- 照射直後の赤み・ほてり・むくみ(多くは一過性と報告されています)
- 毛のう炎
- 炎症後の色素沈着
- 施術部位の乾燥・かゆみ
症状の程度や頻度には個人差があります。実際に受けられるかどうかは、医師の診察を受けたうえで判断してください。
まとめ
- 指針は蓄熱式を推奨度1としているが、他の方式も同様に推奨している
- 痛みは3つの比較試験すべてで蓄熱式が低い。ある試験ではVAS 2.75対6.75
- 脱毛効果は「有意差なし」という結果が続き、どちらが上とも言えない
- 治療時間は蓄熱式が平均20分、単発式が26分という報告がある
- 368人の試験では、日焼けをした人としていない人で有害事象に差がなかった
- 一部に出た色素沈着は、ハンドピースを均一に動かしにくい技術的問題と推定されている
- 指針は「上口唇や眉周囲など狭い照射部位ではハンドピースを十分に動かせない」と明記し、単発式との併用に触れている
- 蓄熱式かどうかより、鼻下に何を使うかを聞くほうが実質的
出典
- 日本美容外科学会ほか関連5学会「美容医療診療指針(令和3年度改訂版)」第5章 脱毛治療(2026-09-05確認)
この記事の作られ方
この記事は医師の監修を受けていません。医療行為の推奨ではなく、厚生労働省・消費者庁・国民生活センター・学会の診療ガイドライン、 および各クリニックが公表している情報を整理したものです。
記載の根拠は記事末の出典に、確認日とあわせて示しています。 効果・副作用・適応の判断は個人差が大きく、記事の情報で代替できるものではありません。 治療の可否は必ず医師の診察を受けたうえで判断してください。
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